イントラパーソナル・ダイバーシティ

イノベーションと多様性

企業経営は、既存事業だけに集中するだけでなく、新しいことに挑戦し次の事業の種(イノベーション)を生み出さなければならない、と言われて久しい。そしてイノベーションを生み出すために、オープンイノベーション戦略を取り入れたり、”新規事業開発室”のような出島組織を新設したり取組みが行われています。

そもそもイノベーションの始まりは「既存の知と既存の知の新しい組み合わせ」であるので、組織や人が「新しい組み合わせ」に気づくかどうかにかっています。したがって、組織に多様性(多様な人材)が必要で、いろいろな価値観を持ち、いろいろな経験、経歴を持っている人が集まり「既存の知の新しい組み合わせ」を見つけ経済的価値を創り出していくことが必要になります。また、経営学の世界でも実証研究が重ねられ、イノベーションには人材の多様性が必要であるというのは間違いではないと思われます。

さて、この理屈は人材が不足しがちと言われる中小企業にも当てはめることができるでしょうか?

中小企業におけるダイバーシティ(多様性)

大企業の場合と比較し、中小企業は一般的には中核人材が不足しているといわれています。今後のWithコロナの時代にあって、中小企業もBeforeコロナの状態に単に戻るのではなく、新たな変化が求められることになると思います。

キャッシュフロー重視の経営であったり、顧客接点強化や生産性向上のためのデジタル化の推進など社内オペレーションの変化もありますし、新たな顧客や商品の開発などの事業そのもの変革を求められる可能性もあります。イノベーションという表現は大袈裟かもしれませんが、新しいことに次々と挑戦し、実行していく姿勢が必要です。

これに対応するために、中小企業は、ダイバーシティ(多様性)人材を取り入れ、硬直しがちな既存の組織の知を多様な既存の知と新しく組み合わせ、新たな取組みとして実践していくことが重要です。

ここではダイバーシティを「多様なスキル、経験や経歴をもつ人材」として話を進めていきます。

中小企業における「多様なスキル、経験や経歴をを人材」とは

  • 自らが多様な経験や経歴を重ねる
  • 女性、シニアの採用(主に非正規社員)
  • 中途(キャリア)人材の採用(主に正社員)
  • 大企業など自分のスキルを活かしたいと考えている副業人材の活用(スキルシェアサイト等の利用)
  • 外部アドバイザーの活用(顧問マッチングサイト等の利用)
  • 外部専門家の活用(中小企業診断士、税理士、社労士)
  • 他社、大学のと技術アライアンス(提携)で得られる人材
  • 合弁会社設立やM&Aで得られる人材

のような人材が相当します。上記の①から⑧に進むほど「仕事の中身と成果」を明確にしておかないと、時間とコストを無駄に使う可能性があります。そこで、私自身も取り組んでいるのが「①自らが多様な経験や経歴を重ねる」つまり『イントラパーソナル・ダイバーシティ』です。

イントラパーソナル・ダイバーシティとは

早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授 入山章栄氏は「個人が、これまでとは違う場に積極的に出たり、経験することで個人の中に養われる多様性のこと」と説明しています。また、入山章栄氏の著書「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)第2部13章p244には、近年の実証研究で「イントラパーソナル・ダイバーシティの高い人は様々な側面でパフォーマンスが高い」という結果が得られていると書かれています。

私の取り組み方

経営学的な視点で難しく説明してきたが、昔から語り継がれている教訓との整合性が高いと思います。

例えば

  • どんな経験も無駄にはならない
  • かわいい子には旅をさせろ
  • サラリーマンの転勤や異動は、その人を人間的に大きくする
  • 修羅場を潜り抜け、乗り越えてきた人は強い

私自身は上記の⑥外部専門家(中小企業診断士)として、中小企業(の経営者)に対し多様なスキルを提供し、中小企業(の経営者)の多様性を生み出すための体験価値を共に共有(共感)する立場にあります。

よって、私自身もイントラパーソナル・ダイバーシティを拡げ、深める努力を継続する大切さに気付くことが大切です。最後に私が現在、イントラパーソナル・ダイバーシティを得るために取り組んでいることを述べたいと思います。

  • OSAKAしごとフィールド(大阪労働協会)相談員と個人事業(診断士)の兼業を継続する。
  • 私のところにきた案件は原則的に請ける。専門分野でないことも、やる方法を考え提案する。
  • 人的ネットワークの拡げ方について、ストラクチャル・ホール理論を参考にして実践する。新しい場所に積極的に出ていく。
  • 新しいメディアに目を向ける。有料ニュースサイトNewsPicksやYouTube虎ノ門ニュースなど、これまで見向きもしなかったメディアに目を向け、自分なりの考えをまとめてみる。
  • 言語化、文書化してみる。考えを整理し自分なりの方向性や仮説を出してブログで発信してみる。

中小企業診断士は企業内診断士が圧倒的に多く、多様性のある「人種」であると思います。また、一人ひとりも多様な経歴、バックグラウンドを持ちイントラパーソナル・ダイバーシティの高い人たちも多いです。しかし、診断士というちっぽけなブランドに引っ張られ、多様性をさらに広げることができず、閉塞的、自閉的になるリスクがあると感じています。

その人それぞれのやり方があります。ちっぽけなイメージに引っ張られたり、縛られることなく、行動することで自分の認知の範囲を広げることを継続したいと思います。