人事評価制度の相談で感じること

7月は、人事評価制度と評価に連動する賃金制度に関連するご相談が3件もありました。

なぜ、そのような相談が出てきたかをお聴きすると、従業員から「給料が上がらないのは評価されていないから?」「何で評価されているのか?」「何を頑張ればよいのか?」の声が出ているからだそうです。

経営層からすると、とても痛いところを突かれた疑問に思う事でしょう。

地上波のCMやネット広告を見ていると、転職を煽られているような気にもなりますし、国の政策でも「リスキリング・学び直し」「キャリア開発」「労働の流動性」「最低賃金引上げ」などの言葉が耳に入り、働いている方々も、自ら行動したり、発言することで賃金アップや処遇の改善に結び付けたいという動機の現われかもしれません。

評価制度を導入すれば従業員の疑問に答えることができるか?

人事評価制度とは、従業員の業績や能力を定期的に評価し、給与や昇進などに反映させる仕組みのことです。メリットは、従業員の目標意識や成長意欲を高めることや、公平な評価基準によって従業員の満足度や信頼感を向上させることなどが挙げられます。

しかし、デメリットもあります。例えば、評価基準が不明確だったり、評価者の主観や偏見が入ったりすると、従業員の不満や不信感が生じることや、過度な競争意識やストレスが従業員の協調性や健康を損なうことなどが考えられます。

つまり、人事評価制度の導入は答えではないということです。

経営者は本当に従業員の賃金を上げたいと思っているか?

たぶん、ほとんどの経営者が従業員の賃金を上げてやりたいと思っています。それと同じくらい、経営者は従業員の賃金は「コスト」なので、「コスト」を増やすと、利益率が低下し、価格競争力も低下すると考えるでしょう。

だからいつも「厳しい、厳しい」と言っているだけです。

そのような経営者が経営する会社で働く従業員は、「社長は、私たちのお給料を上げるため、経営を頑張っている」と感じてもらえるでしょうか?

「今はお給料が少ないが、社長のめざす方向で頑張れば、必ずお給料が上がるんだ」とモチベーションを高めてくれるでしょうか?

つまり、従業員から「給料が上がらないのは評価されていないから?」「何で評価されているのか?」という声が上がるということは、「社長は本気で私たちの賃金を上げるために頑張っているんだ」「社長は私たちのことを大切に思ってくれている」というメッセージが伝わっていないということだと思います。

「何で評価されているかわからない」=「経営方針の落とし込みが弱い」

経営方針に沿って事業計画を達成するために、人事方針や人材ビジョンを定義すべきであると思います。

部門ごとの受注、販売、利益の目標値はすぐ決めることができます。しかし、3年後事業計画を達成するために、どのような人材になるのか、人材ビジョンまで定義している会社は少ないと思います。

この人材ビジョンを単年度毎の行動指針や取組み項目、能力開発、役割や期待に分解できていなければ「評価の軸」は見えてきません。

評価制度のことを語る前に、3年間の事業計画とそれに合わせた人材ビジョンを経営層は語らなければなりません。

3年後の賃金水準から逆算した利益計画を立てることはできないか?

坂本光司先生(「日本でいちばん大切にしたい会社」シリーズの著者)のお話を聴いて、その通りだなと思ったことがあります。

中小企業の経営者の皆さまは、3年間の事業計画で販売、利益計画をどのように立てられているでしょうか?前年度売上金額の10%UP、利益率を前年より1%改善などのように、根拠なく決めていることはないでしょうか?

根拠として、3年後の総人件費、福利厚生費、教育研修費を決め、それを確保するための限界利益(売上ー変動費)計画を策定する。その限界利益を確保するために、必要な顧客構成見直し、商品単価UPの取組み、顧客開拓や商品開発を決めていく。そして、そのためには従業員に対しては、どのように変わってもらわねばならないか。

このような事業計画が従業員にオープンにされ、社長が従業員を鼓舞すれば、何かが動き出さないでしょうか。