図表1 組織学習の循環プロセスを再掲載する。

図表1 組織学習の循環プロセス
(世界標準の経営理論 p225 図表1を掲載)

この章で説明する理論は、図表1 組織学習の循環プロセスのサブプロセス②の「知の獲得」である。知が創造されるプロセスを説明している。

形式知

形式知とは「言語化・記号化された知」:書物、文書、プログラミング言語など

暗黙知

暗黙知とは「言語・文章・記号などで表現することが難しい、主観的、身体的な経験知」である。暗黙知は2つに分類することができる。

  • 特定の経験の反復によって「個人の身体に体化されたもの」:体が覚えているもの
  • 「個人そのものに体化される認知スキル」:信念、直感、ひらめき

SECIモデル(野中郁次郎 組織の知の創造に関する動態的理論 1994年)

膨大な暗黙知をもった個人と個人がぶつかり合い、組織の中で知がどのように創造されていくかを説明している。人は形式知と暗黙知を持っているので、最少で2人からなる相互作用は、「2×2」の4つのパターンに分けて説明することができる。

下の図表2はその4つのパターンとその相互作用を説明する図である。

図表2 知の創造の動的プロセス
(世界標準の経営理論 入山章栄著 p275 図表2をもとに作成)

①共同化:暗黙知→暗黙知

個人が他者との直接対面による共感や環境との相互作用を通じて暗黙知を獲得する。(共同体験、共感、徹底的な対話)

②表出化:暗黙知→形式知

個人間の暗黙知を対話・思索・メタファーなどを通して、概念や図像、仮説などをつくり、集団の形式知に変換する。(比喩、類似推論、アブダクション(仮説化)、デザイン思考)

③連結化:形式知→形式知

集団レベルの形式知を組合せて、物語や理論に体系化する。(ナラティブ(物語る))

④内面化:形式知→暗黙知

組織レベルの形式知を実践し、成果として新たな価値を生み出すとともに、新たな暗黙知として個人・集団・組織レベルのノウハウとして「体得」する。