1980年代までの経営学の心理学ベース理論は認知心理を基盤にしたものが大勢を占めていたが、1990年代頃から感情の理論が経営学に取り込まれた。非言語情報(非認知情報)である感情は、人の認知に大きな影響を与えることが脳神経科学でも明らかにされている。よって、感情のマネジメントが経営者やリーダーに欠かせない資質となっている。
3種類の感情
- 分離感情:「怒り」「喜び」「憎しみ」「恐れ」「嫉妬」「驚き」「悲しみ」「幸福感」「ねたみ」「いらつき」など。外部刺激により引き起こされ、短い期間で収まりやすい感情
- 帰属感情:人がそれぞれ持っている「感情の個性」。ポジティブな人、ネガティブな人。分離感情とは異なり、帰属感情は比較的安定して現れるので統計的な計測ができる。
- ムード:「なんとなくそこに漂っている感情」「雰囲気」。帰属感情と同様にチーム・職場に定着し、そのチーム・職場に限定的である。
感情発生のプロセス
- 外部刺激は人によって認知評価が異なる
- その人の認知評価で、その人の分離感情を体験する
- 分離感情は感情表現される
- 分離感情の体験は帰属感情に積み重ねられる
- 積み重ねられた帰属感情は認知評価に影響を与える
- 感情表現は周囲に伝搬されムードが形成される
- 分離感情の体験は仕事の満足度に影響を与える
感情の効果
ポジティブ感情は、仕事の満足度、仕事の目線の高さ、知の探索にプラスの影響を与える。
ネガティブ感情は、仕事の満足度に対しマイナスの影響を与えるが、知の深化を促すようプラスの影響を与える。
感情労働理論
また、笑顔に対しては笑顔が返ってくるように、意図的な感情表現(感情ディスプレーが影響した感情表現)が周囲へ感情伝播することもわかっている。
認知評価が分離感情の体験に直接影響を与えることが分かっている。
上記のことから、リフレーミングにより、認知を動かすことが感情を変える出発点となる。
よって、多角的な視点、広い視点、他者の視点を持つことの重要性が言われるのは、感情の理論にもつながることである。