ビジネスは意思決定の連続である。しかし、そのために人はまず周囲の情報を収集する必要がある。また、収集して記憶した情報を引き出し意思決定を行う。この情報の収集や引き出しは、きわめて認知的なものである。人は認知の届く範囲に限界があるので、無意識のうちに認知のフィルターがかかっている。これを認知バイアスといい、経営の意思決定に歪みを生じさせていると考える。どのような認知バイアスがあり、どのように認知の歪みを乗り越えるのかを整理する。

個人レベルの認知バイアス

  • ハロー効果 「この人は高学歴なので、他の分野の業績もよいのだろう・・・」
  • 確証バイアス 「自分に都合の良い情報を優先的に取り込んでしまう」
  • 利用可能性バイアス 「簡単に想起しやすい情報を優先的に引き出し、それに頼ろうとする」
  • 対応バイアス 「当事者の人柄や資質などに原因を結び付けてしまう」(責任論バイアス)
  • 代表性バイアス 「面白い人=大阪の人」

組織レベルの認知バイアス

組織が全体で持つバイアスではなく、個人が組織に属することでその人が持ちがちなバイアスのこと

  • 社会アイデンティティ理論

個人の組織への帰属意識のバイアスである。「私は、○○社本社勤務だ!」のように社会的なアイデンティティが、認知にフィルターをかけること。新興国企業が先進国企業を買収する際に、新興国企業の経営者は自国を代表している意識を強く持つため、バイアスが働き、高いプレミアムを払ってでも完遂させようとする事例がある。

  1. 社会分類理論

組織の中で人が他者を無意識にグループ分けする認知バイアスである。多くの人が周りにいる時、何らかの特定情報を足がかりにして、人を「〇グループ」「□グループ」などと分類して認識する傾向がある。また、この「グループ分け」という認知が定着すると、人は自分と同じグループの人に好意的な印象を抱くバイアスがある。これをイングループ・バイアスと呼ぶ。