世界標準の経営理論 入山章栄氏著p225 図表1を再引用する。
この章で説明する内容は、図表1のサブプロセス③の経験から得られた知を組織に記憶させることである。
「記憶」は「知の保存」と「知の引き出し」に大別することができる。
知の保存
知の保存には3つの手段がある
- 組織のメンバー個人の脳内で記憶すること
- モノ(製品、サービス)、ツール(書類、ITシステム)に記憶すること
- 組織の「独自の行動習慣、決まり事」に埋め込んでしまうこと。組織は認知に限界があるので、知が増えるほど認知に負担がかかる。その負担を減らすために企業内部では、当然とされる習慣や標準的な手続きを作り上げる。このことをカーネギー学派では「組織の標準化された手続き」という。これは後に「ルーティン」という概念に発展し、組織の進化理論として展開される。
知の引き出し
効果的に知を引き出すメカニズムを説明する2つの理論がある。
- シェアード・メンタル・モデル(SMM):メンバー間での仕事に関する基本的な情報や役割分担が同様に認識されていること。(基本認識が共有され、何か事が起こった時に、即、想起される状態)
- トランザクティブ・メモリー・システム(TMS):組織メンバーが『他のメンバーの誰が何を知っているか』を知っていること。(組織内の知の分布が、即、想起される状態)(知のインデックス)
両理論の共通点は「組織が『保存した知』を引き出す力を高めるためには、組織メンバーが前提として持っておくべき認知がある」と主張することである。
組織として知を引き出すために
- SMMルールを決め、フォーマル組織で徹底すること
- TMSをフォーマル組織、インフォーマル組織の両方で高めること
- 高度なTMSを特定の個人や組織(専門職)に持たせること
- 部門を跨いでディスカッションしたり、プロジェクト業務を遂行することはTMSを高める。