取引費用理論(transaction cost economics)は、取引で発生するコストを最小化する形態及びガバナンスを見出そうする理論である。これは、企業や組織の形態を定義することにもつながる。
取引費用理論も古典的な経済学を基礎としているため、「人や企業は合理的な意思決定を行う」ことを前提としている。
しかし、「人は将来を見通す認知力には限界があり、人はその限られた将来予見力の範囲内で合理的に意思決定を行う」という考えを取り入れる。
市場取引におけるホールドアップ問題とその要因そして帰結
取引先から足下を見られ、取引をせざるを得ない状況に追い込まれ、不利益もあるが、やむを得ず取引を行っていること。
ホールドアップ問題を引き起こす要因は下記のようなものがある
- 不測事態の予見困難性
- 取引の複雑性
- 資産特殊性
- 機会主義
自社のビジネスに不可欠な「特殊な資産、技術、ノウハウ、経営資源」が、取引先企業に蓄積される。
不測事態が起こり、取引が複雑となり、取引先に頼らざるを得ない特殊な資産が蓄積されてしまった状況では、取引先は足下を見て自分たちに有利な(機会主義的な)取引を行う。自社にとっては取引コストが高くなる。
この問題の帰結は、この取引を自社の内部に取り込むこと。
つまり、「市場での取引において、取引コストが高すぎるので、取引相手のビジネスを自社内に取り込んでコントロールすべきである」となる。具体的には、企業買収などである。
取引費用理論は、「取引の効率性」の視点から企業の範囲(内部化した範囲)を定義しているという見方もできる。