ジェイ・バーニーが1991年に「ジャーナル・オブ・マネジメント」に発表した論文により有名になった企業のもつ経営資源(リソース)を基礎とした理論である。「資源ベース理論」といわれることもある。
SCP理論では、製品やサービスの差別化により、戦略グループの参入障壁を築くことで、完全競争から乖離し独占に近づくことを説明していた。しかし、RBVは、この説明の背景には企業の持つ経営資源(リソース)の異質性と簡単に移動できないこと(不完全移動性)の前提が必要であると主張している。
「完全競争」の条件を理解する
経済学の「完全競争」は次の3つの条件を満たす市場(=産業)の状態
大前提 人や企業は合理的な意思決定を行う
条件1 市場に無数の小さな企業が存在し、どの企業も市場価格に影響を与えることができない。
条件2 その市場に新しく参入する障壁(コスト)がない。また、撤退する障壁もない。
条件3 企業が提供する製品・サービスが、同業他社と同質である。
RBVを理解するためには、4つめの条件を理解する必要がある。
条件4 製品・サービスをつくるための経営資源(技術・人材など)が他企業にコストなく移動できる。
条件4が満たせないと条件3を満たすことができないと考える。
リソースの模倣困難性
1989年ディエリックスとカレル・クルーはマネジメント・サイエンスに発表した論文で、「企業がリソースを一時的に独占できても、それを他社に模倣されたらその価値は長続きしない。リソースは他社が模倣しにくいものでなければならない」ことを主張した。
模倣困難な条件とは
- 蓄積経緯の独自性:長い時間をかけて組み合わせて蓄積されたリソース
- 因果曖昧性:因果関係が複雑なリソースの組合せ
- 社会的複雑性:リソースが複雑な人間関係・社会的関係に依存(企業文化・サプライヤーとの関係)
であり、この条件を満たしている時、ライバル企業は模倣しにくい。
バーニーの主張
バーニーは企業リソースと「持続的な競争優位」の関係性を説明している。
「持続的な競争優位」とは、比較的長い期間、差別化が行われており、他社(他戦略グループ)より儲けられる状況となっていることである。
「競争優位」を実現しうる企業リソースの条件とは
- 経済的な価値があること
- 希少であること
さらに「持続的」であるための企業リソースの条件とは
- 模倣困難で代替が難しいこと
RBVの課題
製品・サービスの市場評価により価値あるリソースは変わってしまう
先進国市場で評価される高機能製品を生み出す社内リソースも新興国市場では価値あるリソースと言えなくなる
ブラックボックス化
「リソース→競争優位」の因果関係を述べているが、企業が求めているのは「競争優位を生み出すリソースをどのように選び、組合せ、活用していくか」であり、それには答えていない。
フレームワークが貧弱である
RBVから落とし込まれたフレームワークが貧弱である。(リソースの分類、VRIO分析、バリューチェーン)
メッセージ性が弱い
「企業は」価値があって、希少で、他社から模倣されにくいリソースを持つべき」と主張しているが「リソースを模倣困難にするにはどうすべきか」といった踏み込みが弱い
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SCP理論とRBV(資源ベース理論)ではSCPとRBVと合わせて解説しています。