SCPとはstructure-conduct-performance(構造-遂行-業績)の略称である。この理論は経済学の産業組織論(industrial organization:IO Theory)が源流になっている。
1970・80年代に、この理論を「経営学のSCP」へと発展させたのが、ハーバード大学のマイケル・ポーターである。「ポーターの競争戦略」の基礎となっている。
「その産業(その市場)が、そもそも儲かる構造になっているかどうか?」を説明するのがSCP理論である。
「完全競争」の条件を理解する
経済学の「完全競争」は次の3つの条件を満たす市場(=産業)の状態
大前提 人や企業は合理的な意思決定を行う
条件1 市場に無数の小さな企業が存在し、どの企業も市場価格に影響を与えることができない。
条件2 その市場に新しく参入する障壁(コスト)がない。また、撤退する障壁もない。
条件3 企業が提供する製品・サービスが、同業他社と同質である。
上記条件が満たされている市場(産業)は「まったく儲からない市場(産業)」である。その対極にある「独占」は「儲かる市場(産業)」である。
「企業グループ」の視点
同じ産業の中でも、製品ラインナップ・進出地域など似ている企業と似ていない企業がある。似た企業同士を一つの「グループ」と考えると、同じ産業でも特性の異なる「企業グループ」が複数存在することになる。
ある「企業グループ」内の企業が、特性の違う別の「企業グループ」に参入するには困難が生じることになる。
ポーターの競争戦略
自社レベルで戦略的な差別化を行い、自社の属する「企業グループ」の特性を創り出して参入障壁を高くし、「企業グループ」内の企業数を少なくする。
このことによって「完全競争」と対極の状況を創り出すことで儲ける。これがポーターの競争戦略の骨子である。
SCP理論をベースとしたフレームワーク
5フォースの分析
- 潜在的な新規参入企業の脅威
- 同業他社との競合関係の脅威
- 顧客の交渉力の脅威
- 売手(サプライヤー)の交渉力の脅威
- 代替製品の存在の脅威
戦略グループの分析
戦略グループとは先に述べた「企業グループ」のことである。
- 自社の属している戦略グループとは何か?
- 自社の戦略グループは参入障壁が高いか?
- どの戦略グループが参入障壁が高く優位か?
ジェネリック(総括的な)戦略
- コスト主導戦略
- 差別化戦略
コスト主導戦略を選択する場合の前提条件は、圧倒的なコスト優位を維持できる場合に限る。失敗をすれば価格競争に陥り、完全競争の条件1と3に近づいてしまうからである。
SCP理論を基礎にした戦略は「差別化戦略」が王道である。
SCPフレームワークの限界の背景
- 「安定」と「予見性」を前提としている。不確実性が高い市場環境では、5フォースが変化しやすく、戦略グループも変化する可能性が高い。長期に安定して(持続的な)競争優位を確保することが難しくなっている。
- 人の認知面(認知心理学の領域)に踏み込んでいない。どの企業をライバルとし、どの戦略グループを構築するかは、経営者の認知面・心理面に大きく影響を受ける。
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