中小企業人事にも「等級制度」が必要なわけ
2025年の活動と人事制度の俯瞰
2025年、私は中小企業の人事制度構築、特に等級制度と評価制度の見直しや改善助言に多くの時間を費やしてきました。多くの場合、人事制度と聞くと「就業規則の整備」「給与査定」「目標管理」「採用活動」といった、個別の仕組みを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。私自身、かつて民間企業で中間管理職を務めていた頃は、それぞれの仕組みを独立した大切な要素として認識していました。当時は、自部門の業績を向上させるために部下のマネジメントが不可欠であり、制度はそのための「部下からの信頼を得る前提条件」のような感覚で捉えていたのです。しかし、現在は人事コンサルタントとして、経営トップの視点から人事制度全体を俯瞰する機会が増えました。その結果、人事制度を経営における構造的な位置づけとして捉え、各機能がどのように連動しているのかを体系的に理解することの重要性を改めて実感しています。

等級・評価・報酬の三位一体の重要性
私がクライアントに対してコンサルティングを行う際、最も多く寄せられる相談テーマは「人事評価制度」「目標管理制度(MBO)」、そして「人材の定着」です。これらの課題を解決するために、最初にお伝えするのが「等級制度」「評価制度」「報酬制度」という3つの仕組みの構造的なつながりです。これらは三位一体で機能するものですが、実態として最も重要でありながら、最も軽視されがちなのが「等級制度」であると感じています。等級制度とは、正社員の格付けを定義するものであり、本来は「等級定義」や「役割等級定義」によって明確に定められるべきものです。しかし、多くの中小企業では従業員数が少ないこともあり、この格付けは経営者の頭の中にのみ存在していることが少なくありません。就業規則に簡易的な等級表があっても、形骸化しているのが現実です。その結果、報酬は等級と連動せず、勤続年数や社長の主観による評価で決まってしまうという事象が起こります。

若手定着の鍵は等級の言語化にあり
これまでは、社長の主観による運営でも組織は回り、業績を維持できていたかもしれません。しかし、昨今の人材確保や定着、人材育成といった課題を前に、これまでのやり方では限界が見え始めています。特に現在の若年層は、自身のキャリア形成や成長の見通しを重視する傾向があります。彼らを会社に引き留め、存分に活躍してもらうためには、人事という仕事に、より深く体系的に取り組む必要があります。付け焼き刃の離職対策ではなく、自社において各等級でどのような役割を担い、どのような技能や視座を身につけるべきかを「言語化」し「明文化」することが不可欠です。現場の従業員を巻き込みながら等級定義を検討することで、社員一人ひとりが目指すべき姿が明確になります。等級が明確になれば、その等級に相応しい目標設定が可能になり、上司と部下の間での合意形成にも深い意味が生まれます。日々の仕事ぶりを観察する中で、部下がどのような思考で行動を選択したかに注目できれば、その強みを活かした育成やモチベーション向上にもつながるのです。

2026年、現場に即した実装を目指して
私は、この「等級制度」の見直しこそが、組織を根本から変える可能性を秘めていると確信しています。そのため、支援の現場では等級制度の重要性を繰り返し、分かりやすく説明するよう心掛けています。2026年は、この考え方を中小企業の現場でよりスムーズに導入し、定着させるためのメソッドやツールの作成に、さらに力を入れていく所存です。人事分野の課題は、採用だけ、あるいは評価だけといった断片的なアプローチでは根本的な解決に至りません。組織全体を構造的に把握し、その土台となる等級制度を再認識することが、持続可能な経営への第一歩となります。経営層の皆様には、自社の「格付けの基準」が今どうなっているのか、一度立ち止まって見つめ直していただきたいと思います。そこにある「言語化されていない期待」を形にすることで、組織は必ず活性化します。来年も、皆さまと共に、より良い組織づくりに邁進していきたいと考えております。

