外国人材と共に創る「三方良し」の職場

ある監理団体で出会った、一人の女性支援員

少子高齢化による人手不足は、多くの中小企業にとって喫緊の経営課題です。その対策の一つとして、外国人材の受け入れを検討、あるいはすでに実施されている企業も多いことでしょう。しかし、現場では言語や文化の違いからくるコミュニケーションの問題など、様々な難しさに直面しているという声もよく耳にします。
私も人事コンサルタントとして、こうした課題にどう向き合うべきか、日々考えています。そんな中、ある外国人技能実習生の監理団体様で、従業員の皆様とのオンライン面談に同席させていただく貴重な機会をいただきました。

これからの外国人材との関わり方を考える上で、大きなヒントになるのではと感じましたので、今回はその時の経験をお話ししたいと思います。
そこで出会ったのは、ミャンマーから来日された20代の女性支援員の方です。彼女は、ある地方の食品工場で働く40名もの技能実習生の支援を、たった一人で担当されていました。その仕事内容は、生活全般の相談から、工場での通訳、日本語教育、さらには特定技能資格への移行サポートまで、本当に多岐にわたります。
その幅広い業務内容と責任の重さに、私は率直に驚きました。しかし、私がそれ以上に感銘を受けたのは、彼女が仕事に対して持っている、ある明確な考え方でした。

彼女が語った「三方良し」の仕事観

面談の中で、彼女の活躍ぶりに感心していることを伝えると、彼女は穏やかな口調で、自身の仕事で大切にしていることを話してくれました。
「私が一番に考えているのは、『実習生たちが、工場長や人事の責任者の方にきちんと評価されること』なんです。実習生が職場で活躍すれば、工場の生産も良くなります。そうすれば、工場の方たちも喜びます。そして、工場からの信頼を得られれば、私たちの仕事も評価されて、これからも継続して新しい人材を受け入れてもらえるようになりますから。」
この話を聞いて、私は「なるほど」と深く納得しました。これは、古くから日本に伝わる「三方よし」の考え方そのものです。つまり、「実習生」「受け入れ企業」「監理団体」の三者すべてにとって良い結果を生み出すことを、彼女は自身の仕事の中心に据えていたのです。彼女にとって、自分の仕事は単なるサポート業務ではなく、関わる人たち全員が良い関係を築くための、大切な架け橋なのだということが伝わってきました。
さらに、その考え方を実践するための具体的な取り組みについても、興味深い話を聞くことができました。
「工場の朝礼で、実習生一人ひとりに、順番で日本語でスピーチをしてもらっているんです。例えば、自分の国の文化や習慣、好きな食べ物といった簡単な内容です。これは実習生にとって、日本語を実際に使う良い練習になります。でも、それだけが目的ではありません。日本人の従業員の皆さんに、彼らがどんな国で、どんな文化の中で育ってきたのかを知ってもらう良い機会になるんです。」


この取り組みは、とてもシンプルですが、本質的だと感じました。外国人材と働く上で起こる問題の多くは、お互いのことをよく知らないという、単純な事実から始まります。この朝礼でのスピーチは、実習生にとっては自分を表現する場となり、自信にも繋がるでしょう。同時に、日本人従業員にとっては、彼らを「言葉の通じにくい外国人」ではなく、「〇〇という文化を持つ、〇〇さん」という、一人の個人として認識するきっかけになります。
このような小さな相互理解の積み重ねが、職場の一体感や信頼関係の基礎となり、結果として仕事の効率や定着率にも良い影響を与えているのだろうと、私は感じました。彼女は、制度やルールといった堅いものではなく、人と人との自然な繋がりを育むことで、課題を解決しようとしていたのです。

私たち受け入れ側に求められる視点

この女性支援員の話は、私たち受け入れ側の企業が持つべき視点について、多くのことを教えてくれます。日本では2040年に向けて働き手がさらに減少していくと言われており、外国人材の力は、今後ますます必要不可欠になります。そうした中で、私たちは彼らをどのように職場に迎え入れたらよいのでしょうか。


今回の話から学べる一番大切なことは、彼らを単なる「労働力」として見るのではなく、共に働く「パートナー」として尊重する姿勢ではないかと、私は考えています。
少し専門的な話になりますが、職場の満足度を説明する考え方の一つに「ハーズバーグの二要因理論」というものがあります。これは、職場の満足に関わる要因を「衛生要因」と「動機づけ要因」の二つに分ける考え方です。
外国人材の受け入れにおいて、私たちは給与や寮の整備といった「衛生要因」に目が行きがちです。もちろん、それらは非常に重要で、土台となるものです。しかし、彼らが「この会社で働き続けたい」と感じるためには、それだけでは不十分です。
あの支援員の女性が朝礼で行っていたスピーチは、まさに実習生たちの「認められたい」という気持ち、つまり「動機づけ要因」を満たすための素晴らしい工夫でした。自分の話に皆が耳を傾けてくれる。自分の文化に興味を持ってくれる。そうした経験が、仕事へのモチベーションや会社への愛着に繋がっていくのです。
彼らがやりがいを感じ、成長できる環境をいかに用意できるか。その視点が、これからの人手不足の時代において、外国人材に選ばれる企業になるための鍵を握っているように思います。

明日から始められる、職場づくりのヒント

今回の出会いを通じて、私は人事コンサルタントとして、企業が外国人材と共に成長していくために、もっとできることがあると改めて感じました。それは、決して難しいことや、多額の費用がかかることばかりではありません。
まずは、あの支援員の方が実践していたように、お互いを知るための小さな機会を作ってみてはいかがでしょうか。例えば、休憩時間に故郷の話を聞いてみたり、社内報で出身国の紹介をしてみたり、歓迎会で彼らの国の料理をリクエストしてみるのも良いかもしれません。
大切なのは、彼らを「お客様」扱いするのではなく、同じチームの一員として、その背景にある文化や価値観に敬意を払うことです。そうした姿勢が伝われば、彼らも安心して心を開き、持っている能力を最大限に発揮してくれるはずです。
もちろん、将来的には、彼らの頑張りや貢献がきちんと報われるような、公平な評価制度や賃金制度を整備していくことも重要です。彼らがこの会社でのキャリアプランを描けるようになれば、それは定着率の向上に直結します。
この出会いは、私にとって、外国人材の活用という課題の答えは、複雑な制度の中にあるのではなく、もっとシンプルで、人間的なコミュニケーションの中にあるのだと気づかせてくれる貴重な経験となりました。この話が、皆様の会社で、外国人材と共に働くためのより良い職場づくりを進める上で、何か一つでもヒントになれば幸いです。