日々の仕事と等級定義をどう結び付けるか?
これまでのブログで、従業員の等級定義の重要さを述べてきました。
等級定義とは働く従業員(ここでは無期雇用社員とする)を、役割や職務推進能力、その他の視点から格付けすることです。等級定義が疎かにされると、賃金の格差が説明できなくなったり、昇格や昇進の説明が曖昧になったり、人材育成の方向性が曖昧になり、外部研修を受講してもその場限りになってしまうことがあります。

等級定義と人事評価の関係
等級定義は働く従業員の格付けを定義したものであるから、各従業員の1年間(半年)の働きぶりや成果を見える化し、定義した格付けに従って人事評価を行えばよいと理論的には説明することができます。
しかし、各従業員の何を評価するのかによって、定義した等級の内容が不十分なことが多々起こります。
例えば、①労働意欲のみを評価する場合は、勤続年数と仕事に向き合う姿勢が等級に定義されていればよい。
②職務推進に必要な能力を持っているかどうかを評価する場合は、「たぶんこの人はこの能力を活かして成果を出してくれるだろう」ということで、「保有能力」が等級に定義されていればよい。
③役割や成果を評価する場合は、従業員に期待する役割と成果が等級に定義されるということになります。
3つの例を出しましたが、①年功的人事制度②職能等級人事制度③役割等級人事制度と人事制度の類型が全く変わってしまうのです。
あなたの会社は何で従業員を評価していますか?
会社によって、つまりこれまで会社を存続(成長)させてきた従業員の働きぶりや社長の大切にしてきたものによって、何で従業員を評価するのかは変わってくるはずです。
決して、先に述べた3つの分類の一つを選択するということではありません。社長の考えに従って、何をどの程度組み合わせるのかと言うことになると思います。
この考える過程が大変重要であり、この考えを明文化したものが等級定義の原型になると思うのです。

等級定義だけで人事評価ができるか?
等級定義が等級別職種別に日々の仕事に結び付くような表現で細分化されて作成されていれば、その項目ごとに評価指標と評価水準を決めることで評価できると思います。しかし、小さな会社では、等級ごとの賃金テーブルがあるだけで、等級定義がなかったり、あったとしても、各等級の中の役職者のみの役割定義に終わっている場合が多いので人事評価に使うことができません。
これらの理由で、人事評価制度の一環として目標管理シートを運用し始めても、何のための目標管理シートなのかが不明確になってゆき、形骸化していくことになるのです。
まず等級定義書を作成し、それに連動した役割を具体的に定義する
まず、等級定義書は一般社員から部長職までの等級を刻み、さらに職種毎に展開していくのがよいでしょう。
その上で職種毎に展開された等級毎(例えば営業職3級(営業職3年目レベル))に役割イメージ、職務遂行能力、保有スキル、商品知識などを具体的に書き出しましょう。
それができたら、その等級(例えば営業職3級)の役割を業務プロセスにそって一覧表形式に記述し役割定義書として作成しましょう。この役割定義書に記述された各項目は、人事評価にも利用できるはずです。項目によっては、仕事に対する姿勢などの情意項目になるものと、数値目標を設定することで定量評価できる項目に分かれるものが出てきます。

とにかくExcelに書き出してみましょう。
とても時間のかかる作業です。また、社長の思いや部門責任者の思いも言語化していく必要があります。
しかし、この作業を協同で行うことで、会社が求める人材像が明確になるはずです。この作業は人事責任者が中心になってとりまとめを行うのが良いと思います。この等級定義書と役割定義書が形になったときには、人事評価制度への展開と採用・定着そして人材育成の施策に活用できることが期待できるはずです。
これらの作業は、外部の公的支援者を入れることでスムーズに進めることが可能です。商工会議所や信用金庫などにご相談してみてください。