社員等級をどう定義していくか

今月のブログも人事に関する投稿となります。

人事評価制度の構築や整備で、まずやるべきことは制度の対象を決めることです。つまり社員区分を決めないといけません。当社には「正社員」「契約社員」「派遣社員」「パート社員」の4種類の社員がいる、というような社員区分です。多くの会社では、「正社員」のみ人事評価制度の対象として、採用・配置・育成・昇格・昇進・降格・異動・定年・退職と管理を行います。

明文化された制度がない中小企業であっても、だいたいにおいて、このような考え方で経営層は社員を見ていると思います。

人事評価制度の構築や整備で2番目にやるべきことは、社員等級を決めることです。つまり「社員の格付け(序列)」を決めることです。

そのためには、その社員等級を定義していく必要があります。しかし、この等級を定義することがとても難しいと思います。

等級定義の難しいところ

これまでの私の経験で、難しいと感じているところを挙げてみます。

  • 等級を何段階に分けるのか
  • 職種による違いをどのように考慮するのか
  • 等級ごとに、どのような人物像をあてはめるのか
  • 等級と役職は整合性が取れているのか
  • 等級と賃金水準は整合できているか
  • 等級昇格、降格の基準は明確にできるのか

以上のような難しさを感じているのですが、これらの難しさを乗り越えて等級定義をすることの大切さも感じています。後でも説明しますが、経営層や幹部メンバーで自社に必要な人物像の認識合わせができるからです。

では、この難しさを乗り越えるために私が今、取り組んでいることをご紹介します。

まずは大括りで考える

まずは、3つの大括り等級として、「一般層」「リーダー層」「マネジメント層」と分けます。「マネジメント層」より上位の階層は「取締役」と考え、等級からは一旦外しておきます。

次に「一般層」「リーダー層」「マネジメント層」に該当する人物像をイメージするキーワードを並べてみます。例えば

「一般層」

  • 基本に忠実
  • 丁寧
  • スピーディー
  • Q・C・Dを指向した工夫や改善 など

「リーダー層」

  • リーダーシップ
  • 問題解決・課題解決
  • 成長・拡大・生産性向上の志向
  • 競合との差別化 など

「マネジメント層」

  • マネジメント
  • 業界内での差別化
  • 組織変革
  • 事業創造 など

ここでリーダーシップとマネジメントの違いについて認識を合わせておきます。リーダーシップとは、不透明な状況の中でも、方向性を示し、勇気づけ、先導することで周りに影響を与える力とします。マネジメントとは、組織の目的、目標に向けて、資源配分を行い、周りに働きかけながら、事業を進捗させる力とします。

どのような行動をする人かイメージする

次に「一般層」「リーダー層」「マネジメント層」のそれぞれの人物がどのような「基本行動」をとるかを言語化します。

「一般層」

  • 挨拶ができる
  • 身だしなみが良く、礼儀正しい
  • 規律や業務ルールを守る
  • 先輩の指導や指示を仰ぐ
  • 判断に迷ったら先輩に相談する
  • 独力で業務がこなせるようになる

「リーダー層」

  • 「一般層」の基本動作が行える
  • 行動計画を策定し、メンバーに展開する
  • PDCAサイクルを意識して業務を遂行する
  • メンバーを勇気づけながら支援し、行動を起こす
  • 必要に応じて報告、連絡、相談を行う

「マネジメント層」

  • 「一般層」「リーダー層」の基本行動が行える
  • 経営計画の策定を行い、目標達成のために資源配分を行う
  • 部門やメンバーに対して戦略的な行動を展開する
  • 事業の進捗管理を行う

表形式に整理すると下図のようになります。

さらに、新たな人物像を具体化する視点を加えていく

さらに加えていく視点とはどのようなものがあるか例を挙げてみる

  • 保有する知識や資格
  • 成果のインパクト(成果や貢献の度合い)
  • 視座の高さや視野の広さ
  • 行動の源泉(モチベーションの源泉・動機付け)
  • どのような人材育成ができるか

下表に、それぞれの視点に対して求めているレベルを言語化します。

このように言語化を多角的に行っていくと、より具体的な人物像が浮かんできます。

それぞれの層を何段階に分けるか

「一般層」「リーダー層」「マネジメント層」を何段階に分けるかを検討します。

考え方の順序として、自社の組織構造が、社長の考えている全社目標を達成する構造になっているかの点検が必要です。また、組織構造を細分化し、多くの部門を設置してもマネジメントができる人が育っていなければ組織の機能不全を起こします。よって、3年程度の先を見て、人材の育成や成長を伴って、組織や体制を変えていく感じでお考えになってはいかがでしょうか?

例として従業員50人(正社員40人、パート10人)の製造業の等級階層を検討してみましょう。

機能別組織で考えると、大きくは製造、営業、総務・経理の3部門必要でしょうか?さらに製造部門は、調達、製作、検査のように役割が細分化されますし、パート社員への指示やとりまとめもありそうです。

上記の例であれば、マネジメント層は2段階、リーダー層は2段階、一般層は2段階ぐらいで良いのではないでしょうか?

具体的に、各等級に求められる仕事レベルを下記のように言語化してみました。

より、等級に求められる人物像と仕事レベルが明確になったと思います。

このように大括りから徐々に分割するとともに、等級の分かれ目が、上手く言語化でき、ある程度客観的に等級分けの判断材料になるかどうかは、運用しながら修正を加えていけばよいのではないかと思います。

社員等級はオープンにしよう

最後に、このように決める社員等級は、会社幹部や主要メンバーを巻き込んで行うことが良いと思います。さらに、一旦作成した後に、何度も何度も見直し微修正し、よりわかりやすく、従業員が読んでも職場でイメージできる表現になっていることが望ましいです。

そして、決定したら全従業員に公開しましょう。

その前に、役職手当や賃金との対応について整理しておく必要があるのは言うまでもありません。そして、社員等級とその賃金水準にハマらない従業員が出てきますので、その解決方法も事前に会社幹部で決めておくべきです。

社員等級がオープンになり、日々の人材育成の指針になり、昇格・昇進の基準として運用されることによって、人事の透明性は高まっていくと思われます。このことによって従業員のモチベーションが高まるというよりも、これまで不信感や不満を持っていた方は、解消されてくるのではないでしょうか?