働く人の多様性と採用手法との関係

今、テレビCM、ネット広告を見ていると、人材確保や採用にかかわる広告をよく目にします。人材にかかわる課題解決を提供する業界をHR(Human Resources)業界と呼んでも良いと思います。このHR業界がインターネット技術とAI技術を駆使し、さまざまなサービスを労働市場に提供しようとしています。この分野のテクノロジーを「HR Tech」と呼んでいます。

人材確保関連サービスの乱立

最近、HR業界にある様々なサービスにどのようなものがあるかを少し調べましたが、凄まじい数のサービスが存在しました。

引用元:株式会社テックオーシャン作成  https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000024.000039682.html
引用元:転職サイト 比較プラス https://www.tosho-trading.co.jp/career/

新卒向けサービス、転職向けサービス、そして、ここでは資料を掲載していませんが「副業マッチングサービス」や「シニア層向け顧問マッチングサービス」なども提供されています。

採用手法も多様化

また、企業が選択することのできる採用手法という視点でと人材確保の取組みを列挙すると以下のようなものがあります。

  • ハローワーク求人(ハローワーク端末検索・インターネットサービス)
  • 求人誌・ポスター
  • Web求人(検索エンジン=Indeed、Google)
  • ナビサイト(新卒、転職、職種、業種)
  • ダイレクトリクルーティング(オファー・スカウト)
  • 採用サイト(自社ホームページ・クラウド型採用サイトサービス)
  • SNS活用
  • 合同企業 説明会(リアル・オンライン)
  • 合同企業 交流会(リアル・オンライン)
  • 単独 会社説明会(リアル・オンライン)
  • 単独 インターンシップ(リアル・オンライン・長期・短期)
  • 単独 体験会
  • 人材紹介(転職エージェント)
    紹介予定派遣
  • リファラル採用
  • 副業マッチング・顧問マッチング・知識やスキルのマッチング

なぜ、このようにたくさんの採用手法が出てきたのか?

これまで見てきたように、HR業界で数えきれないほどのサービスが乱立し、そのお陰もあってか、企業側も新しい採用手法を選択できるようになってきました。

この背景には、もちろんインターネット技術の進展やAI技術の実用化が進んだこともあると思いますが、それよりも、「いろいろな考え方や価値観を持った求職者が出現してきたから」と私は思います。

低成長でデフレに長期間悩まされた日本、大企業の年功賃金制度の崩壊、老後の年金への不安、国の女性活躍と高齢者雇用安定の政策推進、働き方改革によるワークライフバランスの推進、同一労働同一賃金、副業・兼業の推進、事業承継(M&A)の推進、若年起業家への支援、そして大学でのキャリア教育強化など、働く人の価値観に影響を与える社会環境が大きく変化してきたことは見逃せないと思います。

このような社会環境の中で、新卒者、既卒者、転職者、主婦、シニア層、高齢者、そして副業・兼業者など、求職者は働くことに対するニーズを多様化させていったのです。

よって、企業側は、ニーズを多様化させた求職者を採用し、経営目標を達成してくことが重要となるのです。

人材確保で企業が大切にすべきこと

働き手不足を充足するために、目的意識を持たず、採用活動を行っても成功はしないでしょう。

企業にとっては、どのような雇用形態の人材(社員区分の異なる人材)を採用していくのかを考えておく必要があります。これまでのように「正社員」「パート」のような区分では不十分です。その理由は求職者は働き方のニーズでセグメントの細分化が進んでいるからです。

よって、企業(人事責任者)は自社の経営計画を達成するために、どの社員区分で、どのような採用基準を満たす人をいつまでに何人採用するかが重要となります。これが採用計画であり、この採用計画を達成するために採用手法を選択しなければならないのです。

HR業界から次々と発表される新しいサービスに翻弄され、新しい採用手法や流行っている採用手法を選択し、応募者を確保し、選考に進み、優秀と思う人を採用できたとしても、必ずしも自社にマッチした人材かどうかはわからないのです。

自社の経営計画(戦略)に沿って、本当に確保すべき人物像を、どの価値観(働き方のニーズ)を持った求職者層から選び出すのかを冷静に考えるところから、ぜひ始めてほしいと思います。