人事管理の基本を押さえる(2)ー社員区分制度ー

先月のブログでは「人事管理の基本を押さえる」と題して人事管理の全体像(構造)を中心に説明しました。

今回は「人事管理の基本を押さえる」の2回目として人事管理の基盤として最も重要な「社員区分制度と社員格付け制度」の中の「社員区分制度」について解説したいと思います。

「マネジメント・テキスト人事管理入門(第3版)」 今野浩一郎著
 図表:人事管理の基盤システムとサブシステムを参考に筆者作成

社員区分制度の意義

労働関係の法制度や世の中の労働市場の影響、そして労使関係からの要請を受けて、企業には多様な働き方が求められています。よって、企業の中には、仕事内容、働き方、キャリアの異なる多様な従業員が雇用されています。それにもかかわらず、ひとつの人事管理制度を全従業員に適用すれば、管理をするうえで、さまざまな問題点が出てきます。具体的には、正社員(営業・技術・製造・事務などの職種や総合職・専門職など)、契約社員、パートタイマーの賃金、手当、福利厚生、その他処遇の比較の問題です。「パートターム・有期雇用労働法」は、これまで以上に「なぜ、その賃金なのか」「なぜ、正社員と賃金が異なるのか」を非正社員に説明することを求めており、この「社員区分制度」が基盤としてないと、すべての説明が難しくなります。

社員区分の程度と基準

社員区分を細かく分けると、社員区分の中での人事管理制度は整合性と統一感が保たれ、運用がしやすくなります。しかし、社員区分ごとに制度が分かれますので会社全体でみると管理が複雑になります。極端な例ですが、技術職を担当商品ごとに社員区分に分けた場合、技術者の担当商品をまたがった異動により、前の職場と評価制度が変わり給与も変わったなどの問題が発生する可能性があります。

よって、区分の程度や基準は会社の事業や経営方針によって様々であり、これが正解というものはありません。

「マネジメント・テキスト人事管理入門(第3版)」 今野浩一郎著
 図表:社員区分の基準を参考に筆者作成

まず、重要なのは、正社員と非正社員に区分し、正社員をどの程度区分するか、そして非正社員をどの程度区分するか、という考え方で良いと思います。

正社員は、期待する仕事内容(営業と技術など)、期待されるキャリア(総合職と一般職など)、働き方(全国区と地域限定など)で区分されます。

非正社員は、有期契約社員、パート社員などで区分されます。定年退職後に継続雇用される社員は定年を境に正社員から非正社員へと転換することになります。

社員区分制度を見るとその企業の経営戦略やオペレーションがわかる!

複数店舗を効率的に運営する飲食企業の場合、社員区分は非正社員のアルバイト・パート社員が多くなり、本部機能とスーパーバイザーは正社員で占める制度になります。経験を積み重ねた技術者による製造業であれば、正社員による従業員構成となり、さらに技術系社員と事務系社員を別々にするという社員区分制度を採用することになります。

つまり、社員区分制度を見ることで、その企業が人をどのように活かそうとしているか、戦略やオペレーションの大枠が理解できます。

人事管理といえば職種や役職に気を取られ、人事評価の制度をすぐに見ようとしてしまいますが、まずは社員区分制度を見るべきです。