中小企業は新しい働き方にどう対応すべきか?
OSAKAしごとフィールド 中小企業人材支援センターのコーディネーターを始めて、まもなく丸3年が経とうとしています。中小企業の採用、定着にかかわる相談の対応をしている中で、最近、気になっていることがありますので、それをブログに述べてみようと思います。
企業側の悩み
中小企業の人事担当者から寄せられる相談でよくあるのもは
- 求人を出しても応募がない
- 望む人が応募してくれない 若い人が来てくれない
- 定着しない 定着してくれるか不安
というものです。
しかし、この相談内容は、この3年間ほとんど変わっていないのです。私が気になっているのは、中小企業からの相談内容がほとんど変わっていないのに、働く側の多様化や意識が大きく変化している、そして、働く人を取り巻く社会や人材(就業支援)業界が大きく変化してきているということです。
コロナ禍による影響は、主に大手企業の採用プロセスの中で、面談のオンライン化、採用管理業務の効率化という面に出たのではないかと思います。中小企業も慣れない中で、Webでの合同企業説明会でのオンライン面談やWeb面接の対応に迫られたのではないでしょうか。
しかしながら、中小企業の採用方法はこれまでと大きく変わったわけではなく、同じような採用プロセスを行い、人材業界のHRテックの進展やマッチングプラットフォームの台頭になかなかついていけていないと思っています。
働く側の変化
一方、働く側の変化については、高卒・大学(院)卒・中途(転職)・主婦・シニア・外国人・副業・兼業と、構成するセグメントが多様化してきており、それぞれのセグメントを構成する求職者の働く目的がまったく違うというのが特徴です。
これらの求職者は
- 会社よりも職種を重視して仕事を選択
- キャリア形成のストーリーと働き方(短時間労働・各種休暇制度・副業制度)がより重要に
- 時には学校に戻り学び直して、再就職
- しかし、自分に何ができるのか分かっていない又は、過去の経験にこだわる
- 「少し行動⇒ポジティブに振り返る⇒次のチャンスを見つけ行動」には勇気がいる
のような意識に変わってきています。
社会・業界の変化
最後に、社会・人材業界の変化について見てみます。
国・行政の取組み
社会は、求職者の意識を徐々に変化させている要因でもあります。国や行政の動きとして
- 人生100年時代(2000万円不足問題)改正高年齢者雇用安定法
- 副業・兼業の促進に関するガイドライン(厚生労働省R2年改訂)
- 改正女性活躍推進法(R1年公布)
- 外国人の雇用ルール(大阪労働局ハローワーク)
- ダイバーシティ経営の推進(経済産業省)
のような法整備や施策が既に実施されています。
人材業界のテクノロジーの進展
人材業界は、テクノロジーやプラットフォームが大きく進展しました。
ハローワークの求人票も、記載できる内容が増え、インターネットから検索閲覧が可能となりました。
民間求人掲載サイトも従来のような民間事業者のクローズな検索サイトだけでなく、検索エンジンとして、他サイトから求人情報を自動的に探し、自分サイトに取り込むものが主流になってきました。
また、自社の採用専用ホームページを無料で制作できるクラウドサービスが登場したり、オファー型、ダイレクトリクルーティング型など、いろいろなサービスが登場しています。
さらに、採用管理業務を効率化するクラウド型のシステム、自社の人事評価・タレントマネジメントをAI技術を使って管理するクラウドシステムも登場しています。
副業、兼業を探したい人には、スキルシェアやマッチングサイトが多数登場しています。
まさに、広い意味で「HRテック」が大きく進展していることを物語っています。
中小企業はどう対応すべきか?
最後に、中小企業の経営層や人事担当者は、この変化にどう対応すべきか、考えを述べます。
まず、最初にすべきこと
- 働く人(従業員、応募して欲しい求職者)の考えを理解することを心掛け、自社に足りないものを想像する
- HR業界のITツールをいくつか自分で操作し、使いこなしたらどんなことができそうか想像する
人がそこで働く3つの理由
- パーパス(Purpose):存在意義
- 自分の成長
- 良い仲間と一緒に働ける
どんな職場か
- おもしろい仕事がある
- 認め合い、高め合う仲間がいる
- オープンで明るくウソのない職場風土である
具体的な検討項目
人事制度などの制度設計と構築が必要なものもありますが、人材採用と定着の視点から、具体的に検討できるものをあげました。
- 経営の大きな方向性を再度確認しよう
- 組織(機能)とその組織(機能)に必要な仕事を言語化してみよう
- その仕事を任せたい人物像を言語化しよう
- プロジェクト化して、外部(副業)人材を活用できないか検討しよう
- 仕事の見直しや切り出しにより、短時間労働者やシニア人材の活用ができないか検討しよう
- 人材業界のIT技術の理解に努め、使いこなし、会社の魅力や求人情報の発信をしよう
以上