人材の定着について考える

コロナ禍での労働市場の現況

コロナ禍の影響が、労働市場にも出てきています。

8月の全国の完全失業率は3.0%で、2か月連続で悪化しました。完全失業率が3%台となるのは、2017年5月以来です。8月の有効求人倍率も1.04倍と前の月を0.04ポイント下回り、8か月連続で低下しました。

東京商工リサーチは9月15日に、2020年1月から9月14日までに上場企業が募集した早期希望退職者数が1万100人だったと発表しています。9月26日には三菱自動車が500~600人の早期退職者を募集するとありました。

このような状況になると、優秀な人ほど、今後の会社の中での自分の活躍の場を見極め、会社に見切りをつけて、会社の外に活躍の場を求めるようになります。会社は優秀な人に留まってもらうためにはどのようなことを考えなければならないか、いくつかの視点で考察してみたいと思います。

社員が組織に定着する理由

社員が組織に定着する理由を3つの視点から考えてみたました。

1つ目は、自分のキャリアデザインを考えている優秀な社員を想定します。キャリアアンカー理論の「できること」・「やりたいこと」・「やるべきこと」を考え、自分の価値観に照らし、組織(会社)内にキャリアの魅力がある場合、組織に定着すると考えることができます。

2つ目は、社会経験が浅い新入社員を想定します。組織の一員となるために、上司や先輩などから組織の規範、価値観、行動様式を徐々に受入れ、職務を遂行するためのスキルも身につけ組織に適応していく(組織社会化という)。この過程で組織に定着していくと考えることができます。

3つ目は、組織に対し帰属意識(組織コミットメント)が高い社員を想定します。組織コミットメントは、規範的要素、功利的要素、情緒的要素の3つにわけることができます。この3つの要素は、賃金や労働時間などの労働条件面、人事評価の納得度合い(自尊心が満たされているか)、周りとの人間関係などの変化で、その時々で大きく変わります。

下の表は、定着を3つの視点で整理したものです。

これからの個人

「定着」という言葉は、組織側の言葉です。組織に合った個人を採用し、持続的にパフォーマンスを発揮してもらう。そのために様々な人事施策を採って行きます。

では、個人から見た時、「定着」は、組織コミットメントが「高い・低い」で決まりますが、「高い・低い」が何を基準にするかと言えば、それは「個人のキャリアデザイン」ではないのかなと考えています。

世間では、日本の雇用形態も、メンバーシップ型からジョブ型に変わると盛んにいわれ、大手企業から、そのような動きが加速してくると思います。個人の考え方もジョブ型重視つまりキャリアデザイン重視になっていくと思います。

今後、働く方々に、すぐ取組める「個人のキャリアデザイン志向」をご提案したいと思います。キャリアデザインについての主要な考え方である「計画的偶発性」や「キャリアアンカー」を学ぶこと、そして2つほど転職サイトを選び、職務経歴書と共に登録してみること。これだけでも「キャリア」について新たな気づきがあると思います。