採用できている企業と採用できていない企業の差 定着編(4)

2024年3月から3回に渡って、採用できている企業と採用できていない企業の差について投稿をしてきました。今回の投稿、定着編(4)で最後の投稿となります。

これまでの投稿では

採用力診断ツールとは何か

採用力診断ツールのコンセプト

診断項目の詳細

採用に成功している企業と成功していない企業のそれぞれの診断項目の平均値を統計的分析、t-検定を行いました。

計画フェーズ、募集フェーズ、選考フェーズのそれぞれに有意な差がある項目と有意な差がない項目があることがわかりました。

本ブログでは、4つめの「定着」フェーズにおいて、どのような結果が出たかを説明します。

統計的分析の方法 t-検定:2つの標本(平均値)に有意差が認められるかの分析

採用力診断の20設問ごとに、採用成功企業の平均値と採用不成功企業の平均値との間に有意な差が認められるかを確認するのが適当と考え、t-検定(分散が等しくないと仮定した2標本による検定)による統計的分析を行いました。

t-検定は、Excelで簡単に分析することができます。

t-検定とは、簡単に説明すると、2つの標本、ここでは採用成功企業405社と採用不成功企業1175社の2つのグループの平均値の差に有意な差があるかどうか判定し、一定の結論を出そうとする分析手法です。

「有意な差」とは、確率論的に、たまたま出た差ではなく、「意味のある差」である可能性が高いということです。個々の分析では、その「たまたま出た差」が出る確率が5%以下であれば「有意な差」があると判定しています。

t-検定についてご存じでない方もいらっしゃると思いますが、YouTubeで解説動画がたくさんアップされていますので、自習していただければと思います。私は、田中嘉博さんの「【実践編①】t検定:難しい数式と専門用語を使わない統計学シリーズ」を視聴し勉強させていただきました。

「定着」t-検定の結果 平均値に有意な差があったのは「職場の雰囲気」「研修制度」「働き方改革」「多様な働き方」の4つもあった!

「定着」の5つ質問の詳細は、冒頭で述べた3月8日のオフィシャルブログでご確認頂きたいのですが、質問項目は「職場の雰囲気」「研修制度」「人事制度」「働き方改革」「多様な働き方」の5つです。

採用に関わる「定着」のフェーズにおいて、採用できている企業と採用できていない企業の差として、「意味のある差」は、「職場の雰囲気」「研修制度」「働き方改革」「多様な働き方」の4項目であると、検定結果がでました。

「職場の雰囲気」「研修制度」「働き方改革」「多様な働き方」の採用成功企業405社と採用不成功企業1175社の2つのグループの平均値の差において、「たまたま出た差」が出る確率が「職場の雰囲気」は0.00008%、「研修制度」は0.81%、「働き方改革」は0.36%、「多様な働き方」は0.021%で検定基準としている5%よりも圧倒的に小さいことがわかりました。明らかに、この差は意味のある差であるということです。

ちなみに他の質問項目ではどうかと言いますと「人事制度」33.3%であり、「たまたま出た差」が出る確率が5%よりも相当高く、採用の成功、不成功には「人事制度」の差は関係しなかったということになります。

自社の「職場の雰囲気」「人事制度」「働き方改革」「多様な働き方」にどれだけ努力しているか振り返ってみてください

「 職場の雰囲気 」について、 入社した社員を受け入れられる職場の雰囲気づくりを行っている。
(最も当てはまるものを、単一回答)

  1. 取り組んでいない
  2. 部署によっては取組みが不十分である
  3. 取り組んでいる
  4. 取り組んでおり、良好な雰囲気づくりができている

「 研修制度 」について、 人材育成や職場環境の整備として、新入社員向け研修(導入研修や技能向上研
修など)、管理者向け研修(リーダー研修、ハラスメント防止研修など)、職場での OJT 制度を実施、運用
している。(最も当てはまるものを、単一回答)

  1. 取り組んでいない
  2. 一部取り組んでいる
  3. すべて取り組んでいる
  4. すべて取り組んでおり、定期的に見直しも行っている

「 働き方改革 」について、 時間外労働の抑制や有給休暇の取得促進など、働き方改革のための取組み
を具体的に行っており効果が上がっている。 (最も当てはまるものを、単一回答

  1. 年5日の有給取得等、法令で定められた最低限度の取組みを行っている
  2. 声かけ程度に留まっており、具体的には取組みは行っていない
  3. 具体的に取り組んでいる
  4. 具体的に取り組んでおり、効果が上がっている

「 多様な働き方 」について、 短時間勤務、在宅勤務や時間年休などの多様な働き方を可能にする制度を導
入し、運用している。 (最も当てはまるものを、単一回答)

  1. 制度を導入・運用していない
  2. 個別対応が多く、制度整備に至っていないものがある
  3. 制度を導入・運用している
  4. 制度を導入・運用しており、今後も新たな働き方等には柔軟に対応する姿勢がある

採用活動で期待する成果が得られていない会社の経営層及び人事責任者の皆さまは、上記質問をもう一度振り返っていただきたいと思います。自社に興味を示してくれた求職者に対して、入社時は暖かい雰囲気で迎え、入社後は思い存分技能を磨き、そして働きやすさも準備できていることをアピールすることができるでしょうか?

上記4つの質問を振り返り、人事担当者だけでなく、経営層から職場まで全社を巻き込んだ準備が必要となることが予想できると思います。しっかりと準備すべき項目や課題を明確にし、期限を決めて取り組んでほしい内容です。

自社では、何から始めてよいかわからなければOSAKAしごとフィールド中小企業人材支援センターにお問い合わせください。大阪府の支援策として、企業様のペースに合わせてお手伝いします。