コンピテンシー分析を行動変容に活かす
2024年1月、新年最初の投稿です。ブログへの投稿も80件を超え、個人事業をスタートして6期目に入りました。私が気づいたり、思うことを定期的に言葉でアウトプットする目的で始めた本ブログですが、これからも継続してまいります。
さて、さまざまなクライアントの皆さまとお話をする中で、短い相談時間で、ご本人の行動に結び付けていただくことが、いかに難しいかを感じています。相談対応やコンサルティングを通じて、まず、最初に私が目標とすべきことは、「クライアントが、気づきを行動に移して、ご自身の周りの状況をほんの少しでも動かすこと。そして、状況の変化を受けて、次の行動を起こそうと考えもらうこと」ではないかと考えるようになりました。
このようなことを考えている時に、昨年11月頃に「人事分野でのコンピテンシー分析」のフレームワークを学ぶ機会があり、私の頭の中が整理できましたので、本日はその内容を投稿してみたいと思います。
ご参考
これからお伝えする内容は、株式会社ポテンシャル・ディスカバリー・コンサルティングの坂本 健氏のYouTube動画や書籍に示唆を受け、その中で説明されている用語を引用しながら作成したものです。私自身、多くのことに気づかされた内容ですので、坂本健氏の著作物を直接視聴及び読まれることをお勧めします。
行動が起こる順序
行動を起こし、状況が変化するまでを5つのステップに分解します。
- 状況を認識する
- 意図を持ち、自らを動機づける
- 論理的に問題解決の方策を思考・形成する
- その方策を実行する
- 状況が変化する
1→5に向かって行動が起こります。その人の持つ能力の差によって、1→5の影響度合いも大きく異なり、成果の大きさも変わります。このように、思考・行動と成果を一緒に分析することを「コンピテンシーを分析する」といいます。
そもそも人事分野で使われる「コンピテンシー」とは、能力の見方であり、「成果に結び付く思考・行動」のことです。必ず思考・行動・成果の3点セットで対象者の能力を見ることが特徴です。コンピテンシーを分析する目的は「成果が再現するかどうかを予測する」ことです。コンピテンシー分析を行い、コンピテンシー評価をする際、レベル1~5の5段階で判定します。
次にコンピテンシーレベル1~5について、それぞれ説明をします。
コンピテンシーレベル1~5とは?
レベル1
言われたことを、言われた通りに行動するレベルです。使ったことのない機械の操作を、一つずつ教えてもらいながら操作するようなレベルです。このレベル1の人は、指示がなければ行動できず、自分一人では状況変化を起こせません。よって、自ら成果を出すことができないレベルで、成果の再現性がないレベルです。
レベル2
平常時の行動の手順は知っており、最後まで自力で行動できるレベルです。但し、平常時という条件付きであり、少しでもイレギュラーな状況が起こると、自力では行動できません。上司の指示を仰ぐか、イレギュラーな要求を断ってしまい、融通がきかない方です。このレベル2の人は、平常時であれば行動を起こし、状況を変化させることができるので、成果の再現性は平常時であればあるレベルです。
レベル3
個別の顧客の要求が出てきても、自分で論理的に対応策を検討することができ、いくつかの選択肢の中から、問題解決の方策を選択し実行することができるレベルです。レベル3は、過去の経験を思い出し、顧客の要求に対応するパターンに当てはめ、迅速に行動を起こすということではなく、自律的に問題解決思考を駆使して方策検討ができるという理解です。このレベル3の人は、イレギュラーな事案が出てきても、論理的な問題解決力を駆使し、方策検討した結果、選択肢の中からより適切な行動を起こすことで成果に結び付けることができるタイプです。よって、安定して成果の再現性があるレベルです。
レベル4
レベル3が出した成果よりも、はるかにブレークスルーした高い成果水準を出すタイプの人です。レベル3との違いは、顧客の要求が困難なものであっても、意図を持って動機を形成し、レベル3の出す成果よりも、より高い水準に目標設定し、周りの人や組織を巻き込みながらその目標を達成するための行動を起こせる人です。このタイプの人は、志や成果思考が高く、組織を変革し、組織が出す成果水準をこれまでの水準より一段引き上げることができます。よって、高い水準の成果の再現性があるレベルです。
レベル5
レベル4が出す成果と次元が変わります。いわゆるイノベーターです。レベル4との違いは、状況認識力において、視野が広く、視座が高いので、レベル4に見えないモノがレベル5には見えているので、これまでのビジネス環境と違う、競争のない、新たなルールのビジネス環境を構築しようとします。レベル5の人が出す成果とは、他の者が気づくまでに時間がかかる傾向があります。iPhoneが世の中に初めて出て、今は、スマートフォンを使っていない人を探すことの方が難しい状況が代表例です。
レベル判定
コンピテンシーレベル1~5までを説明しましたが、私たちは日常的にはレベル2で生活をしていると言われます。しかし、状況認識と意図を持った動機付けの違いで極めて高いコンピテンシーレベルを発揮する時があります。つまり、困難な状況に遭遇して、自分がいかに考え、行動し、成果を出した時に、最も高いコンピテンシーレベルが発揮されたことになります。そのレベルがあなたのコンピテンシーレベルとなります。
コンピテンシーレベル1・2の方であっても、上記で説明した行動が起こる順序を辿っていると考えます。視野が狭く、視点も低いため、意図を持たず、特に方策を検討する必要性すら感じず、指示待ちになっている方や新たな行動を起こせず、言い訳の多い方がその例となります。
レベル判定は、その人の頻出するレベルを採るのではなく、最も高いレベルを採ります。例えば、普段はレベル2しか発揮していなくても、困難な状況を乗り越える局面でレベル3の思考・行動の事実を発揮して成果を出したのであれば、その方のコンピテンシーレベルは3と判定します。
このコンピテンシーレベル判定の手法は、対象者によって方法が変わります。上司が部下のコンピテンシーレベルの判定を行う場合であれば、業務の中で日常的に行われている報連相の積み重ねで判定は可能です。
但し、ここで注意が必要なのは、部下が成果を上げた時に、その成功の要因分析を行動⇒思考の順序で聴き取り記録しなければならないということです。成功したとき、「まず最初に何をしたの?」「なぜその行動をしようと考えたの?」「どんな苦労があって、何をして乗越えたの?」「なぜ、そうしたの?」と質問をし、行動の事実と思考を確認し、記録することによって判定することができます。
中小企業の支援にどう活かすか?
中小企業の経営者に対するさまざまな支援に、上記の行動が起こる順序やコンピテンシーレベルの考え方をどのように活かせばよいでしょうか?私は2つの見方があるのではないかと考えています。
やり方が分からなければ行動できない(レベル1・2)
私もそうでしたが、どんな事でもやり方を知らなければ行動できません。教えてもらうことでスイスイとできるようになることもたくさんあります。例えば、コロナ禍でZoomによるオンライン会議の実施やZoomによるオンラインセミナーの開催がそうでした。関連する書籍やYouTubeでの関連動画を見て教えてもらうことで、やっと行動することができるようになりました。
基本的な知識をインプットしてもらい、動作手順に倣って行動してもらい、成果を得てもらう。このような支援はすぐに成果に結び付き、クライアントも成果が実感できるものとなります。
私が支援している具体的なものとして、人材採用のためのハローワーク求人票の書き方や、求人掲載サイトの立ち上げ方などがそれにあたります。他にも財務分析の仕方や読み方などをレクチャーするのもそれにあたります。
論理的な問題解決策検討のお手伝い(レベル3)
クライアントが問題と認識していることについて、問題解決の方策を相談された場合、クライアントが考えている方策が適切かどうか検証することがあります。クライアントが過去の経験や思い込みから短絡的に解決策を導き出していないかどうかの検証です。問題の原因分析に遡ることで、解決策の選択肢や組み合わせが増えることがあります。クライアントの問題解決策の検討プロセスに抜けやモレが発生しないように、ロジックツリーで因果関係を辿りながら項目を並べていきます。
これらの支援においても、より成果が期待できそうな問題解決策に近づき、具体的な行動につなげることができるようになります。
人事制度に課題感をもっているクライアントが、評価制度を見直したいと言った場合、課題認識をしっかり確認した上で、人事等級制度の種類(職能等級、役割等級、職務等級)の説明と理解、どの等級制度を採用するかによって、何を決めなければならないか、また、現行制度との整合性を考慮しないといけないものは何か、などをすべて項目として明らかにする努力をします。
状況認識と意図・動機は経営者の資質?(レベル4・5)
コンピテンシーレベル4・5の経営者は既に独自の販路や領域を開拓し、高い収益を上げていると推測することができます。このような経営者は、さまざまな分野の雑談を好む傾向にあります。行動が起こる順序の状況認識や意図・動機にかかわる部分について、他の人の意見を聴こうとします。
状況認識と意図・動機は、経営者の資質であると思います。ここは、私は具体的な支援を行える領域ではないと考えています。但し、専門家としての(私の視座で)意見を述べることは可能ですが、その意見をご自身の状況認識とするかどうかは、経営者自身の判断となるからです。
状況認識と意図を持った動機付けにより、論理的な方策検討に入った段階では、上記で述べた通りの支援は可能となります。
まとめ
行動が起こる順序とコンピテンシーレベルを明確に定義付けすることで、私の支援のスタンスや方法も明確となります。さらに、この行動が起こる順序とコンピテンシーレベルに関わる考え方を、中小企業の経営者の方々にも理解してもらうことによって、経営者自身のレベルアップのみならず、役員や幹部、そして全従業員の人材育成のガイドラインにすることができるのではないかと考えております。
冒頭に紹介しました株式会社ポテンシャル・ディスカバリー・コンサルティングの坂本 健氏のYouTube動画を視聴いただくことで、もっと理解が深まりますので推薦させていただきます。