高年齢者雇用アドバイザー活動を始めて半年が経ちました
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構から委嘱を受けて、高年齢者雇用アドバイザーの活動を2021年6月から始めて、今月で6か月経ちます。
高年齢者雇用アドバイザーとは
令和3年4月1日より改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。
人口統計によると、今後、生産年齢人口(15~64歳人口)は減少の一途をたどり、若年者を採用することは困難になっていくことが予想されています。
また、国の経済・財政の視点から見ても、高齢者が70歳まで働き、年金支給にうまく接続されることも国の政策課題です。このような背景から、高年齢者雇用安定法、雇用保険法の改正が行われています。
このような外部環境に適応していくことを考えたとき、企業は「高齢者の雇用」を戦略的課題として捉え、ポジティブな経営資源としていくことが望まれます。
この「高齢者の雇用」を戦略的課題と考えたとき、企業の状況ごとに、さまざまな取組課題が浮き彫りとなります。これらの取組課題に具体的にアプローチし相談対応や助言、提案を行うのが独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の「高年齢者雇用アドバイザー」です。
この半年間の活動内容
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 大阪支部からアプローチ対象の企業55社のリストを渡され、1件1件電話をかけ訪問ヒアリングの許可をとります。
- 55社のうち、16人の人事責任者又は経営者と面談しました。
- 面談内容は①現就業規則の定年制度又は継続雇用制度の内容確認②常用労働者の年齢別従業者数の把握③現行の賃金制度及び評価制度の概要④高齢者雇用の現状(定年を境にして労働契約、評価制度、賃金制度の変化)のヒアリングとお困りごとや問題意識の把握
- 課題の整理と助言アドバイス
- 事例集や月刊誌などから参考になる情報の提供
- 制度改定に向けた個別提案
活動内容は上記のような内容です。
活動を通じて感じたこと・学んだこと
- 訪問した企業のすべてが「60歳定年・65歳まで希望者全員を継続雇用」の制度を就業規則で決めていましたが、16通りの運用がありました。業種、企業規模、職種、職務内容が違えばそれぞれの運用の仕方があることがわかりました。
- 若年層の採用が計画通りできている企業は、世代交代(新陳代謝)を進めたいがために、60歳定年後の高齢社員を福祉的雇用として扱いがちになるのではないか。
- コロナ禍の影響で業績悪化し、高齢者雇用よりも若年者層の雇用を守ることを優先せざるを得ないなど、難しい選択を迫られている会社もある。
- 60歳定年後の継続雇用は、嘱託契約社員となり1年毎の契約更新が一般的でした。嘱託契約社員に対し、評価制度を運用し次年度の処遇に反映している企業は、ほとんどありませんでした。
- 一方では、何歳まででも働いていてほしい、会社としても安全衛生面に配慮し、処遇改善し、やりがいを持ってもらえるように努力したいという企業も存在する。
まだ、16社しか訪問していませんが、国がめざす70歳までの就業機会確保の実現を考えたとき、人材活用を基本とした基本方針(高齢社員活用戦略といってもよい)が不足しているのではないか考えるようになりました。
今後の活動について
今年度の高年齢者雇用アドバイザーの活動は2月まで続きます。来年度もアドバイザー活動を継続する意向を機構大阪支部に伝えています。
今後の活動において、下記の項目に留意し、知見を高めていきたいと考えています。
- 訪問企業の経営状況に配慮しつつ、60歳から70歳までの高齢社員をどのように戦略的に活用するかの視点を重視する。
- 高まる総人件費を、どのようにコントロールしていくか、高齢者の賃金設計や賃金制度について知見を高める。
- 高齢社員の当該企業での存在意義、仕事の意義を認識し、モチベーションを高めてもらえる研修制度や評価制度の知見を高める。
- 一方で組織の新陳代謝を促す、役職定年制度の有効性と問題点を理解し、制度運用の知見を高める。
上記4点を意識して、活動していきたいと思います。
最後に ー高年齢者雇用アドバイザーの募集についてー
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 のホームページで毎年12月に高年齢者雇用アドバイザーが募集されます。
私は大変勉強になっています。ご興味のある方はぜひ応募してみてください。
12月1日付けのホームページのお知らせ欄に令和4年度のアドバイザー募集が掲載されています。