そこで働く理由

ある法人は、公共分野の仕事を年度単位で受託しています。その法人は、その受託業務を予算の範囲内で実行するために、組織編成をします。

組織の構成員は経営層を除き、嘱託社員と派遣社員で構成されています。

ローコストオペレーションで行うためです。

仕事は年度単位で完結し、それによって派遣社員は契約期間満了となります。嘱託社員についても数年で辞めていく方が多いように思います。

派遣社員に蓄積されていた業務ノウハウや知見は、契約満了によって分断されます。

嘱託社員についても、事業の意義や推進のノウハウが退職によって分断されてしまします。

公共分野の受託業務なのでローコストオペレーションが重要であることは理屈ではわかるのですが、毎年毎年、現場ではノウハウの分断が起こっています。

そこには人事評価制度はありません、目標管理制度もありません、経営層に嘱託社員と派遣社員を育成していこうという考えは存在しません。働く嘱託社員と派遣社員は、自分自身でキャリアステップを外部に向けて描く必要があります。

つまり、そこには「人が定着しにくい仕組み」があります。

経営学者バーナード(1938年『経営者の役割』)は組織の成立条件とは、共通目的(組織目的)・協働意志(貢献意欲)・コミュニケーションの3つであると述べています。

しかし、それだけでは、働く人の成長やキャリアステップを描くためには物足りないと言えます。

やはり、ある程度、その場所で長く働く(定着する)ことを前提にした、「人の成長の仕組み」が必要であると思います。


「そこで働く理由」がその人の成長や誰かの貢献につながっていなければ「辞める理由」になってしまいます。

人の成長を応援し、モチベーションをあげることにお金は、それほどかかりません。中小企業が取り組むべき重要課題であり、効果の出やすい課題であると考えています。

中小企業のビジネスモデルを再点検し、経営課題の解決に取組む時、そのアクションプランや具体的な施策が、働く人の成長につながり、顧客からフィードバックを得られるようにしなければならないと考えるようになりました。