「採用学」を読んで

2016年5月 服部泰宏著

 現在、エルおおさか・OSAKAしごとフィールド(総合就業支援施設)中小企業人材支援センターで働いていることもあり、採用について体系的な知識整理が必要であると考え2回読んだ。

当施設に相談に来られる中小企業ではなく、ある程度、就職希望者を集めることができて、選考プロセスをある程度自社で構築している企業の人事担当者をターゲットに書かれたものであると感じた。

しかしながら、参考になることも多かった。

採用の目的


・企業が設定した目標と経営戦略を実現するために不足している(将来時点で不足すると予測される)分の人材を獲得すること
・新しい人材の獲得によって、職場や組織を活性化させること

良い採用の基準


・ランダムに採用したときに比べて
① 仕事の成果を収めることができる人材を獲得している
② 企業とコミットし、高い満足度を得て中長期的に定着している
・採用活動を行わなかったときと比べて
③ 組織構成メンバーに多様性が生じ、結果として組織全体が活性化している

優秀さとは何か?


新卒採用(2013年4月入社対象)に関するアンケート調査結果(2014年1月9日
一般社団法人 日本経済団体連合会)583社(回答率44.8%)
選考にあたって特に重視した点(5つ選択) 上位から
コミュニケーション能力(82.8%)
主体性(61.1%)
チャレンジ精神(52.9%)
誠実性(48.2%)
と続く。その判断基準は人によって異なる。そして曖昧である。

一方、産業・組織心理学の分野の研究者ブラッドフォードの著書『Topgrading』によればコミュニケーション能力、リスクに対する志向性は比較的簡単に変化する能力に分類されている。そして非常に変わりにくいものに分類されているのは、知性、創造性、概念的能力、情熱、粘り強さである。

つまり、採用時に選考基準とすべきなのは、変わりにくいものである。

中小企業の人材確保は確かに課題が多い!

採用担当者を配置することにも苦慮されている中小企業も多い。そのような状況において、自社の会社情報や働くことの魅力を絞り出し、労働市場に発信する。そして就職希望者を掘り起こし、自社で働くイメージを持ってもらう、そして採用に結びつける。大変難しいプロセスである。自社に合った独自の採用活動のプロセスをトライ&エラーを繰り返しながら、エビデンスとしてデータを残し、分析する。このような地道な活動を今後も支援していきたいと、さらに思いが強くなった。